顧問契約
厚生労働省令和元年12月25日付通知について
昨年12月25日付厚生労働省からの都道府県知事宛通知では、「応召義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方」についての厚生労働省の解釈が示されており、特に「診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方」のうち下記の2点に関しては、医療機関として是非把握しておくべきであると考えます。なお、実際に診療拒否する場合には、事前に当事務所にご相談いただければと存じます。
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患者の迷惑行為
近時の裁判例によれば、裁判所は、①患者側の業務妨害行為あるいは不当要求行為等によって信頼関係が著しく損なわれ、②かつ、診療を拒否しても直ちに患者の生命身体に悪影響を及ぼす危険がない場合には、医師法19条1項の「正当な事由」に当たり、診療拒否は許されると考えております(大阪高裁平成24年9月19日決定 医療判例解説2017年8月号 8頁)。
また、上記通知文書には、「診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合(※)には、新たな診療を行わないことが正当化される。
※ 診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続ける等。」
と記載されており、厚生労働省も「問題患者」に対する診療拒否が正当化される場合がある(但し、緊急対応が不要であることが前提です。)ことを認めるに至っております。
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医療費の不払い
上記通知文書には、「以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しないことは正当化されない。しかし、支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される。(中略)また、特段の理由なく保険診療において自己負担部分の未払いが重なっている場合には、悪意のある未払いであることが推定される場合もある。」と記載されています。
従いまして、支払い能力があるにもかかわらず医療費の未払いのある患者さんには、未払額を用意する見込みや時期を確認したうえで納付誓約書(「0月0日までに必ず支払います。」と誓約する書面)に署名捺印してもらい、それにもかかわらず期日までに支払わない場合には、悪意のある未払いであるとして、診療を拒否することが認められると考えます。
以上