札幌|佐々木泉顕弁護士講演会「モンスター患者の出現背景と対応方法について」~雇用主の安全配慮義務との関係~

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講演・著書 弁護士佐々木泉顕

講演日 平成25年7月23日

北海道町村会平成25年度法務専門研修

不当要求、クレーム対応について


講演から一部抜粋

自治体の役割は、①住民が主体となり、住民から集めた税金、保有する財産を受益者たる住民のために有効活用すること、②より良き行政サービスを提供し、責任をもって結果を実現し、説明責任を果たしていくことである。

しかし、住民の中には、住民の意思や人権問題と称して、自治体の持っている権限や財産を自分たちの利益に活用しようとする人間たちが存在する!
住民全体の意思を無視し、住民の負担を考えず、特定関係者の意向に従って利益供与を行うというその場限りの対応をしてはならない。     

特定関係者の排除、不当要求対策は不可欠である。
① 政策意思決定の面における排除の必要性
② 政策の実行過程たる基本事業の策定過程・具体的な事務
事業執行過程における排除の必要性
        ↓
住民の福祉のため健全な行政を実現し、公正な社会を作らなければならない!

行政対象暴力とは?
行政対象暴力とは、暴行、威迫する言動、その他の不当な手段により行政機関に対し、違法または不当な行為を直接または間接的に要求し、行政の公正・中立を害する行為である。
公務員個人に向けられたものであっても、主として行政の公正を害する目的であれば、含まれる。
要は、公務員に対して、作為や不作為を問わず、職務上の一定の行為を求めるための ①暴行 ②脅迫 ③その他不当要求行為、である。

不当要求行為とは?
不当要求行為とは、暴力行為等社会的相当性を欠く行為、公正な職務の執行を阻害する恐れのある一切の行為の総称である。
① 暴行 人の身体に対する不法な有形力を行使する行為

但し、身体に直接向けられることは必要ではない。
木刀を振り回す行為等も含まれる。
*面談時に机を叩く行為は?
② 脅迫 恐怖心を生じさせる目的で害悪を告知する行為
*「俺に逆らうと首にするぞ!」との発言は?
③ 粗野、乱暴な言動により嫌悪の情をいだかせる行為
④ 庁舎内の施設の保全及び庁舎等における行政庁の円滑な事務事業の遂行を阻害する行為  *庁舎内に長時間居座る行為
⑤ 正当な理由無く面会を強要する行為
⑥ 正当な権利がないにもかかわらず権利があると称する行為
⑦ 許認可等その他契約に関し特定の事業者個人に有利な取扱を要求する行為
⑧ 入札の公正、公正な契約事務を阻害する行為
⑨ 人事の公正さを阻害する行為

クレーマー=困った人?なのであろうか。
「Claim」とは、主張、要求、請求であり、「Claimer」とは、主張者、要求者のことである。直ちに、苦情や理不尽な要求を意味するわけではない。頭ごなしに「クレーマー」だと決めつけるのではなく、まずは相手の話をよく聞き、話の内容を確認することが必要である。
業務に支障をきたすような迷惑行為をする人、職員に危害を加える人、金銭目的の人と正当な主張をしている人を見分け、一線を越えた場合の対応を検討する必要があるのである。

クレーマーの分類

  1. 要求実現型
    最終目的は金であり、金のためなら何でもやるタイプ
    クレーマーとしての行動が経済原理に裏打ちされている
    複数のクレーマー間で情報交換を行う傾向あり
  2. パーソナリティー型
    自分の行動によって他人が苦しむ姿を見て優越感に浸り、
    自己の存在感を確認する。→ある意味で1型よりも厄介
    目的達成により、さらに過激な行動に出る傾向あり
  3. 混合型→上記1,2双方の要素あり

時系列的に見たクレーマー対策

  1. 平常時
    ①クレーマー対策を立てること
    ② 職員に対してクレーマー対策の意識と知識を浸透させる
  2. 緊急時
    ①対策をとっていても事件は発生するので、発生した場合  
    の影響を最小限にとどめるように全庁あげて対応する
    ②クレーマーへの対応内容について説明責任を果たすこ 
    と等により、信用失墜を少なくすること
  3. 収束時
    ① 再発防止策や対応に不備がなかったかを検討する

クレーマー対策総論
① 相手の訴えに真摯に向き合い、内容を十分に確認して、理不尽な要求はきっぱりと断る毅然とした態度
② 組織として対応し、庁内の役割分担を明確化する
③ クレーマーとの面談は複数で行う
④ 担当職員の気持ちを支え、一人で悩ませないようにする
⑤ 暴言、暴力等に対しては警察や弁護士との連携を行う。
⑥ 庁舎内における禁止行為のポスターの掲示
(違反した場合には、庁舎への立ち入りを拒み、又は庁舎か
らの立ち退きを求めること若しくは必要な措置をとることを命
じることを明記する。)。

全庁一体となり、組織として対応せよ!

  1. クレーマーの作戦 
    ①水面下で話を付けたい→表面化することを嫌う
    ②警察嫌い、刑務所はもっと嫌い→弁護士なんか大嫌い!
    ③特定の職員をターゲットにしたい→職員のミスを誘いたい
    ④自分たちに対応することについて職員に嫌気を感じさせたい
  2. 対策
    ①マスコミ報道や、裁判になってもかまわない姿勢を示す。
    ②弁護士や警察との連携を密にする。110番通報の活用
    ③組織全体で対応する。職員一人の問題にしない。
    ④冷静沈着、普段と変わらない対応

クレーマー出現は恥か?

  1. クレーマー出現は必然的であることを役場全体で理解する 
    必要がある。→職員個人の対応が悪かったからクレーマーが
    出現したわけではないのである。
  2. マスコミに出ることは恥か?
    →クレーマーは自分からはマスコミに持ち込むことはない。
    問題が表面化して最も困るのはクレーマー自身である。
  3. 裁判になることは恥か?
    →むしろ司法の場で決着をつけることが望ましい。
  4. 警察や弁護士に相談して良いのか?
    →事案にもよるが、連携は不可避である。

クレーマー対策各論

  1. 複数で対応すること
    常に相手方よりも多い人数で対応することが必要である。
    ①応対係②会話の記録係③制止係④緊急時の通報係
    役割分担を確認する。 
    職員相互の連携が必要である。緊急時に応援体制が可能
    となる体制作りが必要である。
    職員が、自分一人で解決しようなどとは間違っても思わない
    ように、上司への報告、上司からの指示待ちを徹底する。
  2. 対応する場所について 
    対応する場所は、原則として、役場庁舎とする。
    理由 ①公務は役場庁舎内で行うのが原則である。
    ②対応場所について法律上の定めはないので、相手方の要求に応じる必要はない。
    ③不測の事態に備えるためには役場庁舎内がベスト
    ④いつも執務している場所で対応することによる精神的優位性
    ⑤録音、録画がしやすい。
    *相手方の自宅は絶対にNO!    
    *ホテルのロビーは? レストランは?
  3. 対応の際の注意点
    ① 灰皿、花瓶の撤去
    ② 他の職員に声が届くようにしておく
    ③ 対応する人間は脱出しやすいように、出入り口側に着席する
    ④ 湯茶の接待はしない
    ⑤ 対応は、担当者が行い、上司への面談を認めない。
    ⑥ 委任状等の確認
    ⑦ 住所氏名の確認→明らかにしない場合には「職員として職務を遂行する以上、住所、氏名を明らかにしない方とのお話はお断りします。」と回答し、退去を求める。
    ⑧ 録音は必ずする。一応承諾を求めるが、承諾は不要。 *録画は?
    ⑨ 事実確認 相手方の言い分は最後まで聞き、途中で口を挟まない。
    ⑩ 個人での即答や約束はしない。
    →ミスがあっても謝罪文や捺印した名刺は渡さない。
    ⑪ 意見や評価は言わず、客観的事実を言う。
    ⑫ 議論して勝とうと思わない 負けなければよい。
    ひたすら「忍」の一字である。常に冷静に対応すべし。
    相手方への同調は後から攻撃材料とされる可能性大

具体的事例その1
住民A「10年前に、甲町立第一小学校のグラウンドのり面が大雨で崩れて、土砂が私の自宅の庭に流れてきて大変な目にあった。当時教育委員会で校舎の管理を担当していたB係長が将来間違いなく甲町で被害弁償すると記載した念書を作成している。庭の補修のために1000万円要したから、すぐに支払え!」
この場合担当者は、どのように対応すべきか?
1 念書の効力は?
2 時効は?
3 B係長に確認する必要はあるか?

具体的事例その2
A社から、甲町副町長B宛に、紳士録購入の申込書が送付されてきた。申込書には、「定期購読はしません」という欄が記載されていたので、Bは○をつけて返送した。ところが、申込書の裏には、「定期購読はしないが、この本を購入する場合には、返送して下さい。」との記載があり、後日A社から請求書が届いた。
1 Bに支払義務はあるか?
2 一度支払えば、それで終わるのか?
3 A社が役場に押しかけてくることはあるか?
4 本件におけるBの心理状態について 

具体的事例その3
甲町第1小学校3年生のCの両親は離婚協議中であり、父Aと母Bは別居中であり、Cは母Bと同居していた。AはCを自分と一緒に生活させようとして、学校に出迎えに行こうとしたが、Bは事前に察知し、Bを早退させ、甲町内にあるBの実家に連れて戻った。

  1. Aから、第1小学校に対して、
    ①「自分はCの親権者だ。Bの行為は誘拐罪であるから、直ちにCを連れ戻すようにBに伝えろ。そうしなければ学校も誘拐罪の共犯になる。」②今日から1週間以内にBを誘拐罪で刑事告訴しろ。」との申し入れがあった。
  2. 甲町はどのように対応すべきか?

まとめ

  1. コンプライアンスの徹底という観点から、自治体は、不当要求、根拠無きクレームに屈してはならない。
  2. 悪質クレーマー発生は、職員個人の責任ではなく、町村全体の問題として、全庁一体となって対応することが必要である
  3. 事案によっては、役場内部だけで対応せず、弁護士、警察等外部と連携して対応する。


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