札幌|佐々木泉顕弁護士講演会「医師に要求される医療水準と診療ガイドライン」

札幌|弁護士法人 佐々木総合法律事務所(札幌弁護士会所属)
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講演・著書 弁護士佐々木泉顕

講演日 平成29年1月27日

医療法改正セミナー

「第7次改正医療法の概要 役員の責任と損害賠償への対応等」


  1. 平成27年9月28日に公布された第7次改正医療法は、第1条関係が平成28年9月1日に施行され、第2条関係が平成29年4月2日に施行されます。すでに施行されている第1条関係は、医療法人のガバナンス強化に関する事項(医療法人に対する、理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等、理事会の設置、社員総会の決議による役員の選任等に関する規定等の整備)が盛り込まれております。
    また、平成29年4月2日施行の第2条関係は、(1)地域医療連携推進法人制度の創設(複数の病院などを統括し、一体的な運営を行うことにより、経営効率の向上を図るとともに、地域医療・地域包括ケアの充実を推進するもの。)(2)医療法人の経営の透明性を確保するため、一定規模以上の医療法人に会計基準の適用を義務付けるとともに、公認会計士等による外部監査の義務付け、計算書類の公告の義務付け、医療法人とMS法人等の取引状況について都道府県知事への報告の義務付け等が盛り込まれております。
  2. 医療法人のガバナンス強化について
    公益社団法人については、明治29年に制定された改正前民法に基づく公益法人制度を抜本的に見直し、平成18年に一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(法人法)など公益法人制度改革三法が成立し、厳格な公益法人認定制度を設け、公益認定されない一般社団法人についても、対外的には債権者の利益保護(決算公告等)制度を設け、対内的には役員の任務や責任等を明確化しました。今回の第7次医療法改正により、医療法人のガバナンスも、一般社団法人や株式会社に近づき、役員の責任が厳格化されたといえます。
  3. 改正前の医療法には、理事について「医療法人には、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。」との規定はありましたが(旧46条の2)、理事を、理事を選任する機関や、理事の義務などに関する規定は一切存在しませんでしたし、理事会に関する規定もありませんでしたから、社員総会と理事会の権限関係についても今ひとつ明確ではありませんでした。
    改正後の医療法では、理事の選任については、「社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によって選任する。」(新46条の5第2項)、「財団たる医療法人の役員は、評議員会の決議によって選任する(新46条の5第3項)、と選任機関が明確化されております。
    理事の義務については、「医療法人と役員との関係は、委任に関する規定に従う」(新46条の5第4項)と規定されて、理事が医療法人に対して善管注意義務を負うことや(民法644条)や、新46条の4によって一般社団法人法が準用される結果、理事は法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守して職務を行う忠実義務を負うことや利益相反取引等については理事会の承認を受けなければならないことなど、理事の責務が明確化・厳格化されております。
    理事会に関しては、理事会が医療法人の業務執行の決定や理事の職務の執行を監督すること、重要な資産の処分や譲受け等やその他重要な業務執行の決定を行うことなど、権限が明確化されております。
  4. 改正後の医療法では、役員等の損害賠償責任に関する事項も規定されています。
    「社団たる医療法人の理事又は監事は、その任務を怠つたときは、当該医療法人に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。」(新47条第1項)と規定され、また、「医療法人の評議員又は理事若しくは監事がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、当該役員等は、これによつて第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」(新48条第1項)と規定されており、故意又は重大な過失がある場合には第三者に対しても損害賠償責任を負うことも明確化されております。
  5. 想定される事案その1
    複数の病院、診療所を運営する医療法人A理事長Bは、札幌駅前にサテライトを出すことにしたが、サテライトの運営は失敗し、結果的に多額の損失を出したため、責任を取って理事長職を辞したが、後任の理事長Cから損害賠償を請求されたという例を考えてみましょう。
    医療法人の理事がリスクのある判断をして、結果的には失敗したとしても、理事には経営について裁量権があり、リスクのある判断をしても、意思決定の過程や内容に著しく不合理な点がない限り、ただちに責任を負うことにはなりません。しかし、外部から着任した後任の新理事長Cは、Bに対して以前から反感を抱いており、Bの行為は医療法人に損害を与えた行為として損害賠償請求訴訟提起に至った場合、Bは訴訟対応をせざるをえなくなります。
  6. 想定される事案その2
    B医師は、医療法人Aの理事長から頼まれて、経営に関与しないことを前提に理事に就任したが、事務長Cが多額の金員を横領していたことが発覚し、経営の危機に瀕したという場合はどうでしょうか。
    たとえ経営に関与しないことを前提に理事に就任したとしても、理事としての責任を免れるわけではなく、理事会を通じて理事長の経営全般について監督する義務は存在いたします。事務長に金銭管理などを任せきりにしておく体制を放置していたこと等について、医療法人の債権者や破産管財人などから損害賠償請求を受ける可能性があるといえます。
  7. かように医療法改正によって、医療法人の理事が責任追求される可能性が、従前よりも増大していることは明らかですので、何らかのリスクヘッジの手段を講じておく必要があると考えます。

以上

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