コラム 福田友洋弁護士「医療訴訟について その1」
はじめまして。福田友洋です。
新しい年度が始まりましたね。
気分を新たに仕事にプライベートにと頑張っていきましょう。
今回は、医療訴訟について日頃感じることについてお話させて下さい。
現在医療訴訟って、増えていると思いますか。減っていると思いますか。
医療機関で働かれている方は、
大昔は、医療訴訟はほんとに稀だったので、
増えているという感じる方が多いかもしれません。
ところが、新しく提訴された医療訴訟の数は、
10年前から5年前にかけて爆発的に増えた後、
5年前から現在にかけては、やや減少傾向にあります。
医療訴訟が、最近減少傾向にある原因は何でしょうね?
(1)訴訟になる前に、紛争が解決する。
(2)病院が、きちんとした医療を提供するようになった。
(3)マスコミの医療バッシング報道が和らいだ。
等が原因にあげられると思います。
(1)について
訴えられる前の交渉や民事調停で、紛争が解決する数が相当数あると感じます。
医療機関側からすると、
紛争を抱えている期間が短くて済み、
証人尋問等で責任を厳しく追及されたりする場面もなく紛争が終了するので、
訴訟に進行するよりストレスが軽いというメリットがあるようです。
患者側からすると、
緻密な専門的知識に基づいた立証を要求される訴訟になる前に、
一定限度の立証で、
損害賠償請求が認められやすいというメリットがあるようです。
ただし、ゴネ得を防止するためにも、
適正な医療がねじ曲げられないためにも、
訴訟前の和解で紛争を終了させる場合については、
きちんと医療機関側に落ち度がある紛争なのかについて吟味する必要があります。
幸い、札幌市医師会を経由して受任する事件は、
医事紛争処理委員会が医療機関の落ち度の有無を
きちんと吟味してくれているので、
安心して交渉や調停に臨めております。
(2)について
各医療機関や各学会が、医療訴訟対策をきちんと行った結果、
簡単な医療ミス自体が減ったこと、
更には、
医療機関が患者と日頃から十分にコミュニケーションをとるようになったことから、
医療ミスが発生したとしても紛争にまで発展しなくなったことが、
訴訟減少につながっているのではないかと感じます。
(3)について
最近マスコミ報道が、
医療事故が生じる度に、医療機関をバッシングするという内容から、
医師不足からの医療崩壊報道に変化しています。
一時期は、医療機関側はニュースを観るのが苦痛な時期がありましたよね。
それが、最近ぱったりと止み、
むしろ医療界は大変であるという報道が多くなりました。
ちょっと照れくさい感じすら抱きますよね。
これらの変化が医療訴訟減少の原因に挙げられるのではないかということです。
これらの報道によって、
医療事故に対するイメージが、
お金をがっぽり儲けているのに、ヒドイことしやがって!というものから、
過酷な労働環境の中、一生懸命やってくれたけど、
残念な結果に終わってしまったのだから仕方がない!というものへ、
移行したからではないかと感じます。
被害感情が小さければ、
当然エネルギーを浪費して、
紛争にしてまで損害賠償請求するという気持ちはなくなりますよね。
皆さまはどうお考えですか。
原因だけあれこれ考えて終了とするのでは、
中途半端な感じもするので、
次回は、今後医療訴訟数がどうなるのか考えたいと思います。