取扱業務
知的財産法関係について
- 2002年に公布された知的財産基本法によれば、「知的財産」とは、「発明、考察、植物の新品種、意匠、著作物その他人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」と定義されています。
また、「知的財産権」とは、「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利」と定義されています。
分かりやすく言えば、不動産や有価証券のような有体財産とは異なり、形はないが、経済的な価値が認められるアイデア、知識、情報など人間の知的創作活動も有体財産と同じように財産権として保護されるということです。
社会における知識や情報の活用方法はどんどん変化しており、知的財産権を巡る法的紛争も増加する一方ですので、企業は知的財産権に無関心ではいられません。当事務所は、知的財産法関係について佐川慎悟国際特許事務所と業務提携しており、必要に応じてアドバイスを受けながら業務を行っております。
- 商標について
商標とは、自分の商品又は役務と他人の商品又は役務とを識別する標識であり、商品又は役務の出所を示す標章のことです。
つまり事業者が自分の商品と他人の商品を区別するために自分の商品に使用するマークのことなのです。
当事務所でも、S&P(SASAKI&PARTNERS LAW OFFICE アメリカでは総合法律事務所を表す名称として使用されています。)を商標登録しております。
商標登録することによって、商標権が発生し、商標権者は商標専有権に基づき、第三者に対して自己の商標を使用しないように求める権利が発生します。問題なのは、実際に使用していない商標についても登録が可能であるため、使用してもいない屋号について商標登録して、実際に屋号として使用しているお店に、商標権に基づいて、使用の差し止めを求めて金員の支払いを求める不届き者が出現することです。
もちろん、お店が不届き者の商標出願前から商標を使用していて、周りも使用の事実を認識している場合には、「商標の先使用権」という権利に基づき、お店が屋号の使用を継続できることは当然です。当事務所は、これまでに、先発して商標を使用している民間業者あるいは自治体から相談を受けて不届き者と対峙したことが何度かありますが、すべて先使用の事実を記載した内容証明郵便一本で解決しました。
- 著作権について
著作権とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する創作的表現物(著作物)を創作した者に与えられる、複製権、上演権、頒布権などの権利の総称です。
私は、あるいは当社は創作的表現などとは無関係だから、著作権トラブルとは関係ないと考えていたら大きな間違いです。IT技術の急速な発展により、インターネットにおいてデーター量の大きい動画の送受信が容易になりました。従来放送でなければ送信できなかったテレビ番組をネットで配信することが可能となり、インターネットニュースの動画サイトにある自社の紹介番組などの自社に関連する番組をダウンロードによりコピーして、会社内のサーバーにアップロードし、社員全員が手元のパソコンから見られるようにすることも、さらに自社のホームページからインターネットを通じて配信することも可能になりましたが、これらの行為は動画の著作権を侵害する行為であり、著作権者から損害賠償請求を受けることになりかねないのです。
また、コンピュータープログラム(ソフトウェア)を巡る紛争も増加しております。コンピュータープログラムは、コピー(複製)することが非常に容易であるという特徴があり、従業員が会社に無断で社外に持ち出して他社に使用させたり、あるいは、自ら販売して会社に損害を与えることが考えられます。
コンピュータープログラムについても著作権法上、著作物として著作権が認められており、会社としては著作権の侵害がある場合には、侵害した相手方に対して損害賠償請求や著作物の使用の差し止めを求める必要があります。
なお、プログラムの著作物に関する訴訟については(その他の著作権に関する訴訟については札幌で裁判を起こすことができます)、特許権の場合と同様に東京地方裁判所が管轄を有しますので、東京地方裁判所に訴えを提起する必要がありますので、この点について注意が必要です。
上記のように、現代の情報化社会では、著作権とかかわる場面が非常に多いことに留意する必要があります。
- 肖像権・パブリシティ権について
昨今、肖像権・パブリシティ権といった権利についての社会的な認知度が高まり、このような言葉を聞く機会は増えましたが、実際にどのような権利なのか、何が自由にできる行為なのかについての認知度は、必ずしも高まっていないように思います。
例えば、北海道土産となるお菓子を売ろうと思い、パッケージも北海道らしくするため、観光名所であるクラーク像、時計台、テレビ塔、道庁建物の各写真を撮影し、お菓子のパッケージに掲載することはできるのでしょうか。肖像権・パブリシティ権のような権利が問題になり、発売できなくなってしまうこともあるのでしょうか。
私人の所有物を撮影し、その写真を商品に付す行為について、その私人に対して損害賠償・差止め等の問題になることはない(許諾を得ずに利用することが可能である)と解されています(東京地判平14・7・3[かえで]等)。結論的に、各所有者の許諾を得なくとも、このお菓子は問題なく発売できるということになります。
しかし、法律はさておき、これらの作品や建築物の所有者の中には、「自分の所有物を利用された」と感じる者もおり、必ずしも良い顔をするとは限りません。法的に保護される権利でないにしろ、勝手に利用されることは我慢できないという人もいるでしょう。最終的に問題なしとされても、トラブルを未然に避けるため、これらの所有者に対し、事前に承諾を求めたり使用の連絡を行うという方策をとるほうがより丁寧な対応といえます。
インターネットが普及していない時代であれば、お土産を大々的に販売しなければ所有者も気付かずに終わるということもあり得ますが、現在のようにインターネットが普及し、ブログやSNSで個人が情報を発信でき、キーワードや画像でのウェブ検索も容易になっている状況では、写真をお土産に利用していることはいずれ伝わってしまうように思います。
肖像権は、人格権と結びついており、人の姿にのみ認められる(物には認められない)ものです。人間の写真を利用する際は注意が必要です。
例えば、お土産のパッケージとして、政治家等の顔写真を載せる際には、許諾を得る必要があります。
パブリシティ権とは、自己の肖像等が無断で広告宣伝に使用されたり商品化されることをコントロールする権利を一般的には意味し、人について認められます。
また、顧客吸引力を有する物についてもパブリシティ権はあるのでは?という疑問があるかと思いますが、最高裁はこれを否定しています。もっとも、実務的には、円滑にビジネスを進めるため、顧客吸引力を有する物を利用してビジネスを行う場合(ゲームソフト会社が、有名な競走馬の名前をゲームソフトに登場させるとき等)、その所有者にライセンス料を支払う例もあるようです。
- 不正競争防止法について
近代社会における営業活動は、自由かつ公正な競争によって行われることが経済の健全な発展にとって必要不可欠であり、自由かつ公正な競争の妨げとなる不当な行為(不正競争)があるときは、不正競争防止法が介入して規制することになります。
不正競争防止法に基づく保護を受けるためには、登録されていることは必要ありませんので、商標登録されておらず商標法に基づく保護が受けられない場合等であっても、不正競争防止法に基づく請求は認められることになります。
当事務所で扱う不正競争防止法関係の事件や相談で最も多いのは、「営業秘密」に関する事件です。営業秘密に関する不正行為に対する規制は、旧不正競争防止法の平成2年改正によって導入され、平成17年改正後は、2条6項に「この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」と規定されています。
企業においては、製品設計図などの技術やノウハウはもちろんこと、顧客名簿等の営業秘密が重要であることはいうまでもなく、科学技術の大進歩により膨大な情報が小さなUSBメモリー1本で簡単に持ち出せる現在の状況から、企業において培われてきた大事な情報が競業他社に流出する危険が増大していることに留意する必要があります。
不正競争防止法によって保護される営業秘密は、上記2条6項の規定から(1)秘密として管理されていること、(2)事業活動に有用であること、(3)公然と知られていないことが必要となります。
当事務所の経験からは、いざ営業秘密の侵害を理由に訴訟提起を検討した場合にもっとも障害となることが多いのは(1)の「秘密管理性」の要件であり、裁判例でも原告側の請求が棄却されるケースは、秘密管理性がないという理由がほとんどです。
秘密管理性の要件を満たすためには、主観的に秘密として管理しているだけでは足らず、秘密資料の保管場所を決めることや、秘密データーにアクセス出来る者を制限することなどの管理体制を整えること、「秘密管理規程」の作成などにより、客観的に秘密として管理されていると認識できることが必要となります。