取扱業務
企業法務について
- バブル期と現在の違い
企業法務とは、「企業の事業活動に伴い発生する各種法的業務」のことであり、具体的には、各種契約書、規則や規程、議事録などの作成、株主総会や取締役会の指導、事業活動に伴い発生するトラブルへの対応や指導などの業務をいいます。会社の設立や倒産手続きも広い意味では企業法務に含まれます。20年前のバブル期と異なり、現代社会は、不況の長期化、情報の氾濫、個人の権利意識の拡大、社会全体が法令遵守を要請する傾向により、トラブルが複雑化、多様化しています。
バブル期は、自分の会社さえ順調に経営できていれば、トラブルも少なく、弁護士や裁判所と関わり合いになるようなことは、ほとんどありませんでした。個人情報の管理を巡ってトラブルとなることもありませんでした。
→マイナンバー制度について
- 裁判所との関わりの増加→当事務所が担当した事件
しかし、バブルがはじけると、自分の会社は何とか経営できていても取引先が破産するという事態が増加し、裁判所から、破産宣告の事実、破産管財人の選任、債権者集会の期日の連絡を受けることになり、裁判所との関わりは不可避となりました。
また、不況による給料削減→従業員の生活苦→住宅ローン等の借財の支払不能→延滞→裁判所から給与差押通知が届くという事態も増加し、こちらも裁判所に陳述書の提出などの対応が必要となります。
- 契約書等の書面作成の必要性
これまでの日本は相互の信用で成り立ってきており、取引するにもいちいち契約書など作成する必要はなく、万が一取引内容をめぐってトラブルが発生したとしても、相互の譲歩によって早期円満解決することが多かったのです。しかし現在では長引く不況のために、どの企業も余裕がなく、譲歩したくても譲歩できない状況であり、トラブル回避のためには、取引対象の特定、代金支払時期及び代金不払事由などを明確にした契約書に調印した上で取引を開始する必要があります。これまでのように、口頭の約束だけで取引を開始することは企業としては絶対に避けるべきです。
- 労使関係を巡るトラブルの増加
中央労働委員会の発表によれば、昨年全国の労働委員会が扱った事件数は、
前年比33%増で、平成以降最多となったとのことです。内容的には、解雇、賃金に係るものが増えており、札幌・北海道経済の長期的な不況に加え、2008年秋のリーマンショックによる景気後退の加速、雇用情勢の深刻化の影響を受けていると分析されています。
労使関係を巡るトラブルは、労働者の生活権の問題に直結しますので、トラブル発生防止には最大限の注意が必要であり、労働契約書の条項にしても、ただ一般的なひな形どおりでは、トラブル回避に有用とはいえません。
たとえば、契約期間1年の契約社員の雇い止めを巡るトラブル防止のためには、期間更新はしないことを労使双方が明確に認識できるような労働契約書を作成することが、労使双方にとって必要なのです。
テレビCMでは、大手法律事務所がさかんに過払い金返還請求を呼びかけており、過払い金返還により消費者金融事業者の疲弊が伝えられていますが、最近の状況をみると「過払い金返還」の次のターゲットは、一般企業に対する「未払い残業代」であることは間違いありません。札幌でも当事務所の顧問会社に対して、突然弁護士名による未払い残業代請求の内容証明郵便が届くことが多くなりました。当事務所の経験では、労働時間管理については企業によって差異があり、全く不備のない企業は珍しいのが現実です。しかも、未払い残業代請求権の消滅時効は2年間ですから、毎月の金額は少なくても、2年間分となるとそれなりの金額になります。企業としては、早急に就業規則の記載方法を工夫するなどの対策をとっておく必要があると考えます。
- 不当要求などへの対応
不況の長期化によって、暴力団あるいは右翼が、企業に対して紳士録購入などの取引を要求したり、商品に言いがかりをつけたりする事件が増加しております。彼らからの不当な要求に一度でも応じると、要求行為が手を変え品を変えて際限なく行われることになることは間違いありませんので、断固拒絶すべきです。事なかれ主義は企業崩壊の第一歩です。
また、一般市民からのクレームも増大し、クレーマー対策が企業の重要課題となっております。相手が一般市民であっても、不当な要求には応じるべきではありません。
頻繁な電話や面会要求に対しては、面談強要禁止や営業妨害禁止仮処分申立により十分対応可能です。我が国が法治国家であることを忘れずに不正とは断固戦う企業であることを社会に示すことが企業価値を高めることになります。
- 隣接士業の方との業務提携
的確な企業法務のためには、隣接士業の方の協力を得ることが必要不可欠です。当事務所は、多くの公認会計士事務所、税理士事務所、特許事務所等と業務提携しており、必要に応じてアドバイスを受けながら業務を行っております。