コラム 下矢洋貴弁護士「企業再生・倒産事件の相談雑感」
昨今の経済情勢に伴い、北海道も景気の悪化・後退がいわれて久しいです。
その結果、当事務所にも、会社経営に行き詰まった経営者の方からの企業再生・倒産処理に関する相談が増加しております。
その際「もっと早く相談していただき、適切な対応をとっていれば、破綻を回避できたのではないか」と残念な思いをすることも少なくありません。
中小企業の経営者の方にとって、資金繰りが苦しくなり、会社存続のために、最後の最後まで金策に奔走することは、当然のこととして理解できます。しかしながら、その結果、ご相談頂いた時点では、かえって事態が悪化しているケースが少なくありません。
よくある具体例として、以下のものがあります。
・無理な金策を繰り返し、ときには高金利の借入を行ってしまう
・借入増加・返済猶予に伴う不必要な担保提供(抵当権、債権譲渡担保、代物弁済予約等の設定)
・従業員への給与支払いの遅滞により、従業員が去ってしまう
・公租公課(社会保険料・源泉所得税等)を滞納するようになり、差押えがなされる
・親族、従業員を連帯保証人として借入を行ってしまう
当事務所では、事業継続・再建に向け、取りうる手法に従い最大限のアドバイスをさせていただきますが、ご相談頂いた時点で会社を再建できる体力が維持できていることが不可欠であり、上記事情は取りうる選択肢を狭めてしまうばかりです。
また、結果的に事業継続を断念し、破産等の清算手続きを選択することになる場合にもおいても、弁護士への早期相談・早期着手が不可欠であることは言うまでもありません。
経営者の方が、取引先や従業員に迷惑をかけたくないとの強い責任感の一心で、会社財産が底を尽きるぎりぎりまでその場しのぎの対応をされることは、かえって収拾のつかない事態を招いてしまいます。
事業停止の判断が遅れ、その間負債が拡大してしまうことは、結果的に一般債権者への配当が減少することになります。
また、債権者が会社・倉庫等に押し入り、取り付け騒ぎがおきてしまえば、一部の強硬な債権者のみへの優先配当を許してしまう結果となります。
そして、会社財産が流出してしまうことで、本来保護されるべき従業員の給与や退職金が支払えない事態が生じてしまいます。
これらの弊害は、弁護士に早期に相談し、十分な準備を行えば対処できる問題です。
経営リスクへの対処は、人の病気と同じで、早期診断、早期対処が大切です。
症状が軽い段階での対処であれば、有効な治療法が多数あります。
また、症状が悪化している場合でも、傷口が広範囲に及ぶ前に事態を収束させる必要があります。
危機的状況に陥る前に、まずは弁護士にご相談頂ければと思います。