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最近の事件から 安楽死と尊厳死の違いについて
米国人女性・ブリタニー・メイナードさんは、2014年1月に末期の悪性脳腫瘍と診断され、医師から余命半年と宣告された。治療法も無く、激しい頭痛に苦しめられるなかで、メイナードさんは尊厳死を決意。家族とともに、尊厳死が法律で認められているオレゴン州に引っ越した。オレゴン州の尊厳死法では、余命6か月未満で責任能力ある末期患者が、医師から処方された薬を自分で投与することで死を選択することを認めている。メイナードさんは、予告していた11月1日に、自宅で家族に見守られる中、医師が処方した薬を服用して亡くなった。
メイナードさんの尊厳死について、日本でも議論が沸騰したが、安楽死と尊厳死について正確に理解していない論者が存在する。
安楽死とは、薬物等を使用して意図的積極的に死に至らせる行為であり、尊厳死とは、延命治療を行わない、または中止して死期を早める行為であるが、東海大安楽死事件判決(横浜地判平成7年3月28日)では、安楽死を、積極的安楽死、間接的安楽死、消極的安楽死に分類しており、この分類からすれば尊厳死は消極的安楽死に該当するので、裁判所の見解によれば尊厳死は安楽死の一類型として安楽死に含まれることになる。
1976年(昭和51年)3月31日、アメリカで尊厳死を認めたカレン事件の判決があり、日本でも、この年に日本尊厳死協会が設立されたが、当時は尊厳死という表現がなく、安楽死協会と称して、消極的安楽死を主張していた(一般社団法人日本尊厳死協会発行の「新・私が決める尊厳死」11頁参照)という経緯がある。
但し、現在、日本尊厳死協会は、薬物等の使用により積極的に死期を早める安楽死は尊厳死とは概念が別であるとして完全に区別している。メイナードさんの事例は、医師が薬物を使用して積極的に死に至らせるものであって、日本では尊厳死ではなく安楽死に該当し、薬物を処方した医師は刑法202条の自殺幇助罪となり、6月以上7年以下の懲役又は禁固となる。上記東海大安楽死事件判決によれば、安楽死として医師の責任が否定されるためには、患者に耐え難い肉体的苦痛が存在することや死期が迫っていることが必要なので、今回の事例では、要件を満たさず、医師は間違いなく有罪となる。尊厳死は日本の多くの病院で行われているが、現在も見解は統一されていないし、法制化もされていないため、安楽死はもとより尊厳死に関与した医師は、たとえガイドライン通りに対処したとしても川崎協同病院事件の医師のように殺人罪等の刑事責任を問われる可能性があるのが現状である。
尊厳死の法制化が待たれる。